活動紹介
国際学校保健コンソーシアムの活動を紹介します。

ガーナでの学校保健活動について

報告日時:2020年9月10日
報告者:上野 真理恵 

みなさん、こんにちは。今年度より事務局メンバーに加わりました上野です。
JICA海外協力隊・学校保健隊員(2017年度1次隊)としてガーナに派遣された際の、現地での活動について報告します。

ガーナでは、国連児童基金(UNICEF)の支援により1992年からSchool Health Education Program(SHEP)が開始されました。教育省には、学校保健局が設置されており、全国の教育事務所には、学校保健担当者が配置されています。学校保健担当者は、管轄する地域内にある学校を巡回し、学校保健活動のモニタリングと教員や児童生徒への指導に取り組んでいます。また、各学校では、校長が学校保健を担当する教員を選出し、その教員が中心となって、学校保健活動を進めています。

2004年には、橋本イニシアティブにより、ガーナの首都アクラに国際寄生虫対策西アフリカセンターが設立され、学校保健を通じた寄生虫対策が強化されました(国際寄生虫対策西アフリカセンタープロジェクト.2004年~2008年)。私の任地は、このプロジェクトにおいてモデルサイトとなったアダ・イースト郡です。アダ・イースト郡は、首都アクラから車で2時間ほどのガーナの沿岸部に位置し、人口約8万人(2019年)の町です。学校保健隊員は、学校保健担当者と協働し、管轄地域内の学校(小中学校計77校)における学校保健活動の支援が求められていました。特に、プロジェクトのフォローアップとして保健教育の充実が求められていました。

学校保健隊員として取り組んだ活動のひとつに、「健康歌を通した日常的な保健教育の推進」があります。ガーナでは、保健が単独の科目にはなっていません。理科で健康に関する内容は取り上げられますが、一部のトピックのみであり、学校における保健教育は十分とは言えません。また、保護者も、保健教育を受けてきた経験が少ないため、家庭における日常的な子どもへの教育にも課題があります。このような状況から、子どもたちが健康に関する知識を身に着けられるよう、日々の生活において保健教育の機会を増やすことが重要だと考えました。そこで、歌うことが好きなガーナ人の文化を活かし、健康歌づくりに取り組みました。同僚や地域の住民と一緒に、現地語の健康歌を8曲(身の回りの清潔・手洗い・環境衛生・水衛生・マラリア予防・栄養・歯科・救急処置について)作成し、それぞれ、健康に関する知識が歌詞に盛り込まれるように工夫しました。出来上がった健康歌は、一冊の歌集として製本し、各学校に配布しながら、児童や教員に対する保健教育を実施しました。また、毎月、ラジオ番組で同僚と健康歌を紹介し、地域に向けた啓発活動に取り組みました。

各学校では、健康歌集を活用し、朝の集会等で児童に健康教育を実施し、合唱する等の取り組みがありました。また、ある学校では、教員が健康歌集を国語の音読の教材に使用していました。保健教育は、教育活動全体に渡って展開されるべきものだと考えます。この活動から、保健が単独の科目として存在しないガーナでの保健教育の実践に関して、その国の文化に合った指導方法の開発や、他教科との連携等、新しい気づきを得られました。

   
作成した現地語の健康歌集                                手洗い歌のページ

   
小学校での保健教育の様子                                                    ローカルラジオ番組での健康歌紹介


健康歌集が現地語の授業の教材として使われている様子

 

なぜインドネシアではいじめが少ないのか?

報告日時:2020年8月4日
報告者:小林潤

 現在、思春期の自殺数の上昇は世界的問題となっており、日本においても成人の自殺数は減少しているのに対して思春期では増加傾向にある。この原因の背景の一つとして、いじめの問題は無視できないと考えられる。さらにはネットいじめの問題は質量ともに深刻になっているといえる。

 一方、インドネシアは自殺率が極めて低い国の一つで、Global School- Based Surveyによればいじめの件数も東南アジア諸国のなかでは低かった。この現状を受けて「なぜインドネシアではいじめが少ないのか?」、琉球大学とインドネシア国ロンボク島のマタラム大学医学部のチームは研究を開始した。

 この結果、カリキュラムのなかにイスラム教等の宗教教育と、多民族他宗教を尊重しているという道徳教育が含まれており、これが効果的にいじめを予防しているということがわかった。さらに課外活動として課外活動としての文化活動も影響していることも示唆した。これらの結果は、いじめの問題が深刻化している日本を始めとした諸国の改善策立案に参考となるものと考えている。この結果はPediatrics International誌に投稿中である。

 

国際学会NUTRITION2020で発表しました

報告日時:2020年7月1日
報告者:手島祐子

皆さん、こんにちは。
事務局メンバーの手島祐子です。
 
先日、American Society for Nutrition主催の国際学会NUTRITION 2020で、修士課程の研究をまとめて発表しました。この学会は、今年の6月に、アメリカのシアトルで開催予定だったのですが、新型コロナウィルスの影響で、急遽オンラインでの開催になりました。
 
私の研究では、Demographic and Health Surveys (DHS)の個票データを用いて、5歳未満児を対象に58か国の低中所得国における個人レベルの栄養不良の二重負荷の経年変化と、その栄養不良状態と社会経済的不平等指数の検討を実施しました。
 
栄養不良の二重負荷とは、2つ以上の栄養不良状態(低栄養状態では、消耗症、発育阻害、微量栄養素欠乏症、過栄養状態では、過体重や肥満)が発現している状態をいいます。そして、これは、国・地域レベル、家族間レベル、個人レベルで起こることがわかっています。
開発途上国では、近年は、発育阻害の子どもの割合は横ばいで推移している一方、
過体重の子どもの割合は、少しずつ増加しています。ゆえに、発育阻害である子どもが過体重状態(個人レベルの栄養不良の二重負荷)になっている可能性があります。私は、青年海外協力隊としてインドネシアの農村で栄養改善活動に従事した経験から、この問題点に着眼し、本研究するに至りました。
 
現在は、この論文を投稿できるように頑張っています。
アブストラクトがこちらで見ることができます。
https://academic.oup.com/cdn/article/4/Supplement_2/915/5845940
 

タイの知的障害児に関する現地調査活動報告

報告日時:2020年6月23日
報告者:野口 祐子

みなさん、こんにちは。
事務局メンバーの野口祐子です。
 
2020年2月に3週間、JICAタイ事務所でのインターンシップを行い、タイの知的障害児施設を中心にタイの知的障害者の現状について学んできました。
タイには障害者エンパワーメント局所管の障害児(7-18歳)施設が4か所あり、そのうち3か所で知的障害児を受け入れています。今回はそのうちの2施設、当事者団体、アジア太平洋障害者センター、ラジャヌクル研究所を訪問させて頂きました。
施設スタッフへのインタビューを通して、日常生活能力があるにも関わらず、行き場がなく施設にいる18歳以上の入所者が全体の40%いることがわかりました。タイ政府は民間企業および公共団体に対し、従業員100人につき1人の障害者を雇用することを義務付ける法律を定めています。しかしながら、知的障害者施設の入居者に就職するチャンスはほとんどありません。社会のサポートを受けること、仕事を得ることの難しさによって彼らが社会で生活することを妨げています。

 


ブルキナファソでの学校保健活動についての報告

報告日時:2020年5月24日
報告者:渋谷 文子

みなさん、こんにちは。
今年度より事務局メンバーに加わりました、渋谷文子です。

私はJICA青年海外協力隊の看護師隊員としてブルキナファソで活動していました。首都ワガドゥグから約2時間離れた場所にあるクドゥグ市にあるカトリックの女子校において学校保健活動を行いました。現地教員と共に保健の授業を行い、性教育(月経指導や性感染症等)やマラリアに関する予防知識の普及に努めました。栄養指導や手洗い指導など日常生活の保健衛生に関する指導も行いました。また、保健室を立ち上げて、身体計測や健康相談に関する保健指導を実施し、生徒の健康管理能力の向上に対する支援を行いました。継続性のある活動を行うことが自己の課題であり、任期終了後も学校職員が学校保健活動を継続できるように、現地教員と共に保健の教材を作成し、保健室の管理は学校長に引き継ぎました。

文化や社会的背景が強く、また信仰する宗教の規則に伴い、性教育の指導内容に制約が生じ指導が難しかったです。実際に若年妊娠や性感染症に罹患した生徒も在籍していましたが、これらの背景に伴い予防策の指導が十分に行えませんでした。このことから、教育機関での予防教育と学校保健体制を整えることが必要であると感じました。現在は琉球大学大学院保健学研究科国際地域保健学教室修士課程に在籍し、開発途上国の性教育に関する研究を行う予定です。研究活動を通して、解決すべき問題点や自身の活動を通しての疑問に対する答えを明らかにして、学校保健体制を改善できるように取り組んでいきたいと思っています。

  
手洗い指導の様子                                                                       保健の授業風景

  
現地教員と共に指導している様子                                                   身体計測の様子
     

 

ネパール・カトマンズでの高校生への結核教育の論文発表

報告日時:2020年4月28日
報告者:城川 美佳

2019年度に実施した、調査の結果が論文として発表されました。
Gopali, RS., Maharjan, B., Kigawa, M.. (2020). Expert Consensus on the Essential Preventive Knowledge of Tuberculosis for High School Students, Kathmandu, Nepal. Biomed J Sci & Tech Res 26(2), 19849-19857. BJSTR. MS.ID.004332. DOI: 10.26717/BJSTR.2020.26.004332
https://biomedres.us/pdfs/BJSTR.MS.ID.004332.pdf

ネパールは、世界的にも有数の結核高蔓延国です。結核対策には、予防教育、受診、治療とそのモチベーション維持、と多岐にわたり、それぞれに課題が生じています。また、生徒が学校で習得した健康に関する知識を地域に広めあるいは地域での健康活動に参加することで、地域住民の知識の習得・普及に効果があることが知られています。そこで、ネパールの結核対策において高校生も同様の役割を担うことが可能ではないか、と考えました。しかしながら、結核対策の教育項目の優先順位は、それに関わる専門家の専門領域によって異なります。また、高校生では様々な知識の習得が必要ですし、成績に直接関わらない保健教育の1項目でしかない結核に関する知識は彼らにとって優先順位が低いかもしれません。そこで、本研究では、多領域の専門家の優先順位を意見集約するために実施しました。
今後は、ここで得られた知見をもとに、教材や知識普及のための方策について検討したいと考えています。

JC-GSHR/大阪大学UNESCOチェアがアジアにおける学校保健の専門家と共同研究

報告日時:2020年3月31日
報告者:小笠原理恵(大阪大学UNESCOチェア事務局)・杉田映理(大阪大学人間科学研究科)
 
JC-GSHRは、大阪大学に設置されたUNESCOチェア「グローバル時代の健康と教育」のパートナー機関となり、アジアにおける学校保健の専門家ネットワークを構築しています。JC-GSHRの小林潤理事長は、大阪大学UNESCOチェアの運営委員会のメンバーにも就任しています。2019年5月10日には、大阪大学UNESCOチェアのキックオフ・シンポジウムが大阪大学の吹田キャンパスで行われ、小林理事長はじめJC-GSHRのメンバーも多く参加しました。
また、JC-GSHR/大阪大学UNESCOチェアとして、アジア諸国の学校保健についての共同研究を進めています。これまで、2019年5月10日~11日、9月16日の2回にわたってフィリピン、タイ、ラオス、カンボジア、ネパール、韓国、中国そして日本の学校保健の専門家たちを大阪に招き、ワークショップを行いました。ワークショップでは、各国の学校保健に関連する政策や取り組み、成功している点や阻害要因についてディスカッションを行い、国によるアプローチの相違について理解を深めました。
JC-GSHRのメンバーが各国の専門家のカウンターパートとなり、現在もこの共同研究は続いております。
 
 ※大阪大学UNESCOチェアについては:http://ou-unescochair-ghe.org/



2019年5月10日大阪大学UNESCOチェアのキックオフ・シンポジウム


アジアからの専門家とともに学校保健についてのワークショップ

ケニアにおける学校保健の導入


報告日時:2020年3月13日
報告者:秋山 剛(長野県看護大学人間基礎科学講座 准教授)

報告者らが、ケニアにおける包括的学校保健の導入とその効果について論文を公表しました(下記リンク参照)。長崎大学 熱帯医学研究所、Kenya Medical Research Instituteおよび教育省、保健省が2012年から2018年にかけて実施したJICA草の根技術協力プロジェクト「健全な地域社会をつくる学童支援プロジェクト」の活動の一つとして、申請者らが同国の学校保健プログラムを、現地の小学校を対象に導入しました。活動地域は西部ビクトリア湖岸のMbita周辺地域の小学校で、今回の論文では主に2013年―2016年にかけての学校保健の改善状況について報告しています。また、学校保健の状況と、学業成績と有意な関連についても検証しました。
論文アブストラクト:https://doi.org/10.1093/heapro/daaa005

  

ネパールでの学校と家庭での菜園プロジェクト


報告日時:2020年3月7日
報告者:Rachana Manandhar Shrestha 
(東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻国際地域保健学教室客員研究員、
スクールホームガーデンプロジェクトのプロジェクトコンサルタント)


 ジャンクフードの消費量は、学齢期の子供の間で増加しています。先行研究では、学齢期の子供がジャンクフードの広告にさらされることによってより、ジャンクフードに魅了されやすく、その結果、ジャンクフードの摂取量が増加することが示されています。さらに、不健康な食品のマーケティングは学校周辺に集中しており、子供たちや周りのコミュニティーがジャンクフードを容易に入手できるようになりました。

 

写真:学校敷地内のスナックショップと学童

 スクールガーデンという取り組みは、低所得国と高所得国の両方で広く使われているアプローチで、子どもの食事に関する知識や、好みや選択に影響を与えます。しかしながら、このようなプログラムは、実際の食物の選択に関する影響は、食物の知識と好みに関する影響よりも少ないことが示されています。これらの理由として、スクールガーデンが親の食行動にまで十分な影響を与えていないことや、子供の家で健康的な食品が常に入手できるとは限らないということが考えられます。そのため、学校と家庭両方での菜園プロジェクト「子供たちの健康的な食事選択への取り組み:学校と家庭菜園を組み合わせた実証実験」が、ネパールのシンドゥパルチョク地区にある合計30の学校で、ネパール政府とタイのWorld Vegetable Centerと共同で実施されました。
 
 このプロジェクトは、1年間のクラスターランダム化比較試験で、15の介入校と15の対象校があり、8-12際の900人の学童とその保護者が対象となりました。このプロジェクトの目的は、園芸の実地体験と栄養教育を組み合わせて、学童とその両親の食物選択に影響を与えることでした。このプロジェクトは、学童とその世帯に、果物や野菜などの健康食品を育て、それらを食べる方法について伝えました。 データは、介入前後において(2018年から2019年にかけて)子供と保護者から収集しました。この研究の結果によって、学校の庭を通して子供たちがより健康的な食物を選択できるようにするためには、子供とその保護者をターゲットにする必要があることを明らかにしました。
 
 
写真:学校の菜園と家庭菜園で働く学童とその保護者



 

学校精神保健の基本プログラム開発のためのワークショップ

報告日時:2020年1月31日
報告者:西尾彰泰(岐阜大学保健管理センター)

報告者らは、東南アジア諸国で用いることができる学校精神保健の基本プログラムを開発するための第一段階として、東南アジア教育大臣機構と共同でワークショップを開催した。
ワークショップは、タイのバンコクにおいて、2019年3月6,7日に行われ、ASEAN諸国から担当者が集まり、各国の学校精神保健の現状を報告し、それを元にASEAN諸国で採用されるべき、学校精神保健のミニマムスタンダードについて討論を行った。そこで報告された各国の現状を、①学校精神保健に関する法律・法令、②学校における精神保健サービス、③メンタルヘルスに関する教員の研修、④生徒向けのメンタルヘルス教育の4つの観点から分析を行い、その結果を「Current situation and comparison of school mental health in ASEAN countries」として執筆し、学会誌に掲載された。
また、ワークショップでは、学校精神保健のミニマムスタンダードとして、①生徒のメンタルヘルス教育(教員のトレーニングも兼ねる)、②地域のメンタルヘルスリソースと、学校の連携システムの構築、③子供のメンタルヘルスを評価する簡便なツールが必要であることが確認された。そこで、①を実現するために、小学生・中学生・高校生向けに、それぞれメンタルヘルス教育の教材を作成し、フィリピンの教育省と連携して、2019年9月より、フィリピンのパンパンガ州において、実際に現地の教員に使用してもらった。12月3,4日にフィードバックセッションを行い、教員からコメントをもらい、より使用しやすい教材へと改訂した。そして、改訂された教材をフィリピンの教育省へ提供した。今後は、フィリピン国内での認可プロセスを経て、2021年の夏頃には、フィリピン政府公認の教材として出版される予定となっている。