スリランカ南部州出張

国立国際医療研究センター 野中 大輔

日 時:2010年7月5日(月)~10日(土)
同行者:小林博(札幌がんセミナー)、南里明子(国立国際医療研究センター)

訪れた学校の敷地には、特徴的な建物があった(写真)。これを見るとスリランカに来たという実感が湧いてくる。仏堂である。敬虔な仏教徒が多いスリランカの学校ではよく見られる光景である。この仏堂には、地域住民がお祈りに来るという。

あるアジアの途上国での話。村の中で最も重要な場所はどこですか?という問いに、多くの住民が村役場や診療所ではなく、学校と答えたという。学校に立派な仏堂が併設されているスリランカにおいても、恐らく学校は地域の中心ではなかろうか。
今回の出張の目的は、南部州のパイロット校二校にて開催された“ヘルス・キャンプ”を視察することである。このキャンプの目的は、学校から地域へ健康増進を進めることである。従って、学校が地域の中で重要な場所と認識されているであろうスリランカでは、極めてふさわしいイベントかも知れない。
早速、ヘルス・キャンプに参加してみる。校舎に入ると直ぐに受付があり、学童が私に対して質問してくる。シンハラ語である。意味は分からないが、状況から名前と年齢であることは想像がつく。次に、身長・体重測定だ。その結果から学童は私のBMIを計算し私のカードに記録してくれた。次に血圧測定と続く。測定が終わると、各教室で行われている学童のデモンストレーションを見る。食品に関する講義、タバコの害に関する講義、蚊が媒介するデング熱に関する劇(写真)などが行われていた。最後に、近くの病院から出張してきた医師による健康相談、必要があれば医師が処方箋を書き出張薬局が無料で薬を配布していた。

初めて参加したヘルス・キャンプは、内容が濃く、身体測定・予防啓発・健康相談とバランスが取れている構成と思った。キャンプは年一回の行事であるが、タバコの講義をした学生は生涯、友人にタバコの害を啓発しつづけるかもしれない。参加した大人たちは、学童のメッセージを受け止め、禁煙したり、食事や運動にさらに配慮したりするようになるのではなかろうか。
小林博教授の研究班では、ヘルス・キャンプをはじめとする学童の活動の、地域住民の健康増進に対するインパクトの評価を行っている。今回視察した活動が地域全体の健康増進に大きく貢献しているという研究結果がでることを願っている。

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