SDGsに資する日本型学校保健の課題と発展可能性の検証研究

概要

 本事業は、SDGsの実現やCOVID-19対策等の課題に対する日本型の学校保健の貢献の可能性と課題を実証的に検討することを目的とします。開発途上諸国での日本の学校保健支援やESDの普及状況に関する聞き取り調査を行い、日本型の学校保健の課題と発展可能性を検討します。さらに、日本、ラオスの教員養成校において、SDGsやCOVID-19対策に関する教材開発、教員研修、子ども保健クラブ等を活用した健康診断活動等を行い、その成果と課題を明らかにします。

目的

 SDGsの実現やCOVID-19対策等の課題に対する日本型の学校保健の貢献の可能性と課題を実証的に検討することを目的とします。具体的には、以下の4点を明らかにします。

①開発途上諸国での日本の学校保健支援の継続性とそれに関わる要因 
②開発途上諸国でのESDの普及状況と今後の課題
③日本、ラオスの教員養成校における、SDGsやCOVID-19対策に関する教材開発、開発
された教材を用いた教員研修の成果と課題
④ユネスコスクールを通じたESDの推進(日本)、子ども保健クラブ等を活用した健康
診断活動(ラオス)の成果と課題

対象国

ラオス・カンボジア・ネパール・バングラデシュ・ニジェール・ガーナ・ケニア

実施体制

2021年度の活動の進捗状況

①日本の学校保健支援/学校保健/COVID-19/ESDに関する聞き取り調査

 対象7カ国の現地協力者と複数回のオンライン会議を開催し、これまでに各国において、ODA事業で実施された学校保健支援に関する情報、学校保健,学校でのCOVID-19対策及びESDに関わる行政文書(政策、戦略、実施ガイドライン、活動計画、行政通知、教員用ガイドライン等)の収集と分析、各種調査の対象者の選定、調査のためのインタビューガイドの作成、及び調査実施のための倫理申請などを行いました。

成果物

1)2022年の日本国際保健医療学会のシンポジウムでの報告
2020-2021年にPediatrics International に掲載された以下の6つの学術論文、「日本の学校保健サービス」、「日本の学校保健に関する人材育成」、「日本の学校での保健教育」、「日本の学校保健における健康診断活動」、「日本の学校保健における子どもの参加」、「日本の就学前機関における健康増進活動」を基に、日本の学校保健及び学校保健支援の特長と開発途上国への応用可能性と課題について報告しました。

Factors Enabling Systematized National School Health Services in Japan. Pediatrics International, 2021, Shizume, E., Tomokawa, S., Miyake, K., Asakura, T. DOI: 10.1111/ped.14864

Sustainable human resource training system for promoting school health in Japan.
Pediatrics International, 2020, 62(8): 891-898, Tomokawa, S., Miyake, K., Asakura, T.
DOI:10.1111/ped.14292

Lesson learned from health education in Japanese schools.
Pediatrics International, 2021, 63(6):
619-630, Tomokawa, S., Shirakawa, Y., Miyake, K. et al. DOI: 10.1111/ped.14637

Health screening system to ensure children’s health and development in Japan.
Pediatrics International, 2021, 63(8): 869-879, Tomokawa, S., Miyake, K., Takahashi, K. et al. DOI: 10.1111/ped.14733

Participation of children in school health in Japan.
Pediatrics International, 2020, 62(12): 1332-1338, Tomokawa, S., Miyake, K., Takeuchi, R., Kokudo, S., Asakura, T. DOI: 10.1111/ped.14347

Lessons on health promotion from Japanese early childhood development. Pediatrics International, 2020, 63(1): 22-36, Miyake, K., Tomokawa, S., Asakura, T. DOI:10.1111/ped.14400

②日本、ラオスの教員養成校等における教材開発(ESD×保健教育)の実証研究

 信州大学が主導する調査プロジェクトでは、日本、ラオスの教員養成校等における教材開発(ESD×保健教育)の実証研究を行います。2021年度は、SDGs及びCOVID-19に資する教材として、4つのトピック(COVID-19、包括的な性教育、水衛生及び生活習慣病)に関する教育教材、教員研修用資料、教師用指導案(日本版及び開発途上国版)を作成しています。教材開発とそれを用いた授業研究を通して、SDGsの実現に寄与する人材育成を目指すために、健康問題をエントリーポイントとして、ESDに取り組むための教育教材の開発を進めています。日本や世界で生じている健康問題を取り上げて学ぶことで、その発生に関連してる貧困や格差の問題とそのメカニズムを理解し(わかる)、 「誰一人取り残さない」世界の実現のために、自分達がなすべきことについて考え、具体的な行動を導く(できる、伝えられる)ことを狙っています。学習活動の構成・設計においては、持続可能な社会づくりの構成概念である以下の6つの視点、1. 多様性(いろいろある)、 2. 相互性(関わりあっている)、 3. 有限性(限りがある)、 4. 公平性(一人一人大切に)、 5. 連携性(力合わせて)、 6. 責任制(責任を持って)が組み込まれるように配慮しています。また、学習活動を通して、ESDの理念において提示されている持続可能な社会づくりのための課題解決に必要な以下の7つの能力・態度(1. 批判的に考える力、2. 未来像を予測して計画を立てる力、3. 多面的・総合的に考える力、4. コミュニケーションを行う力、5. 他者と協力する力、6. つながりを尊重する態度、7. 進んで参加する態度、を身に着けることができるように構成しています。具体的には、COVID-19では、感染症に関する予防教育のみならず、ワンへルス、感染症の蔓延によって生じる差別や偏見の問題、ワクチン接種の問題、感染症の蔓延の長期下によるメンタルヘルス問題への対応などについて教材化を進めています。包括的な性教育では、生理や世界で行われている様々な性教育などについて教材化を進めています。水衛生については、感染症対策の一方策としての手洗いの実践、またその実践を促すためのナッジ理論を用いた啓発活動の企画、そして水資源の利用の不平等の問題などを取り上げています。さらに、生活習慣病では、肥満と痩せの二重負荷の問題、食生活と生活習慣の関係、食に関する社会・文化的な背景などについて教材化を進めています。

 2022年の1月上旬から、将来、日本の教育現場で教員を目指す信州大学の教育学部の学部生及び大学院生を対象として、開発した教材を用いたオンライン授業研究を始めました。オンラインで授業研究を行うことで、信州大学のみならず、大阪大学、琉球大学、等からも人類学、公衆衛生学、ジェンダーなどの専門性の異なる教員や大学院生が多角的な視点から議論を行っています。また、日本の現職教員の方や開発途上国のフィールドで豊富な活動経験のある方等が参加することにより、多角的な視点から日本型(特長を生かした)の保健教育とは何かについて深い議論を重ねています。1月下旬からは、ラオス人の現地研究者とのラオス版の教材開発を開始します。

③子ども保健クラブ/ユネスコスクールの活動に関する実証研究

 国内の教育現場を対象として、健康、安全、環境等をテーマとしたESD活動を表彰するESDアワード設立の準備を行いました。