太平洋島嶼国ミクロネシア地域における学校保健研究
報告日時:2024年5月1日
報告者:渋谷 文子(琉球大学大学院保健学研究科)
本文(長さは自由です):
琉球大学大学院保健学研究科 国際地域保健学 博士後期課程に在籍中の渋谷文子です。
太平洋島嶼国ミクロネシア地域における学校保健に関する研究成果をまとめた論文をご紹介させていただきます。
2022年11月~2023年1月にかけて、太平洋島嶼国ミクロネシア地域の3か国(ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国)でフィールドワークを実施しました。
政策文書の調査と主要情報提供者へのインタビューを通じて、学校での新型コロナウイルス感染症対策の実施に関連した要因を調査しました。
【論文タイトル】
ミクロネシア小島嶼開発途上国における新型コロナ感染症対策に関する学校保健関連政策とその実施に関する多国間比較ケーススタディ
Multi-country case study on school health policy and its implementation in relation to COVID-19 control in Micronesia Small Islands Developing States
【概要】
本研究は, ミクロネシア小島嶼開発途上国において, 新型コロナ感染症の対策フェーズに応じた学校保健関連政策とその実施に関わる要因を明らかにすることを目的としました. 研究の意義としては, 学校保健関連政策の実施を促進・阻害する要因を特定し, 従来の保健課題および将来の公衆衛生危機に備え, 脆弱な学校保健システム強化に貢献できる可能性が考えられました. 本研究では, ミクロネシア小島嶼開発途上国のミクロネシア連邦, マーシャル諸島共和国, パラオ共和国を対象とした, 多国間比較ケーススタディを実施しました. 政策文書の調査では, 世界保健機関が新型コロナウイルス感染症パンデミック宣言を表明した2020年3月11日前後の変化に着目し, 予防・備え・対応 (Prevention, Preparedness, and Response:以下, PPR) のフェーズ毎に学校保健関連政策への影響を調査しました. また, 学校保健に関わる対象者にインタビューを実施しました. データ収集から分析の過程では, PPRフレームワークに基づき, 学校保健実施の3つの段階に焦点を当てました. 結果より, 教育の地方分権化は, 教育と保健セクター間の連携を通じて, 国家および地方レベルで学校における新型コロナウイルス感染症対策実施に貢献したことが明らかになりました. また, 更なる公衆衛生危機に備え, 感染対策と災害管理の双方を統合した学校保健活動を推進する必要性が示唆されました.
Shibuya F, Hattori-Uchima M, Dacanay P, Peter F, Ngirmang TT, Dacanay R, Takeuchi R, de Los Reyes CS, and Kobayashi J. Multi-country case study on school health policy and its implementation in relation to COVID-19 control in Micronesia Small Islands Developing States. Trop Med Health. 2024;52:27.
DOI:https://doi.org/10.1186/s41182-024-00590-8
出典:https://www.moas.org/Arts-and-Culture-of-Micronesia-1-5705.html