学校保健とは、学校において、児童生徒等の健康の保持増進を図ること、集団教育としての学校教育活動に必要な健康や安全への配慮を行うこと、自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力を育成することなど学校における保健管理と保健教育であり、日本では文部科学省主導の下、様々な施策が推進されています[1]。途上国においても学校保健は重要視されており、特に「包括的学校保健」という枠組みの導入が主流となっています。

 1995年、WHOによって提唱されたGlobal School Health Initiativeにより、包括的学校保健をコンセプト化し、Health Promoting Schoolというヘルスプロモーションを基盤とした戦略が打ち出されました[2,3]。さらに1999年には、ユニセフがChild Friendly School を提唱し、子供の権利の保護を基本とした健康増進活動を進めました[4]。これらの戦略は、2000年にFRESH(Focusing Resources on Effective School Health)として各開発パートナーが同意した戦略として統合されました。これは、各団体の活動に重なる部分が多いにもかかわらず、各団体が異なった理念のもと個別にアプローチすることは、資源の効率的活用という点で問題があったため、WHO、ユネスコ、ユニセフ、世界銀行の4者が、学校保健に関わる資源(人材・資金など)を効果が期待できる活動に集約させることについて議論し、提案された戦略でした[5]。

FRESHは以下の4つのコンポーネントを統合的に行うものとなっています。1)学校保健に関連したポリシー 2)安全な水と環境 3)健康教育 4)学校を基盤としたヘルス、栄養のサービス。WHOが初めに提唱したHealth Promoting Schoolには上記4つのコンポーネントとは別に独立したコンポーネントとして「地域との連携」があげられていましたが、FRESHでは地域との連携はすべてのコンポーネントに重要であるとされています。学校から地域にポリシーや環境改善、健康教育を発信でき、逆に地域住民が学校保健に参画することによってより効果的かつ継続的に学校保健活動が展開できると期待されます。

持続可能な開発目標(SDGs)に寄与する活動

持続可能な開発目標(SDGs)は、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています[6]。SDGsには17の目標があり、学校保健は、主に教育と保健の双方に関連する4つの目標の達成に寄与することが期待されています。

Goal 3 すべての人に健康と福祉を
Goal 4 質の高い教育をみんなに
Goal 5 ジェンダー平等を実現しよう
Goal 10 人や国の不平等をなくそう

参考文献

  1. 文部科学省 学校保健の推進:https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/index.htm
  2. WHO, WHO's Global School Health Initiative: health-promoting schools: http://www.who.int/school_youth_health/media/en/92.pdf?ua=1, 1998
  3. WHO, Promoting Health through Schools The World Health Organization’s Global School Health Initiative: http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/41987/1/WHO_TRS_870.pdf, 1997
  4. Child Friendly School:www.unicef.org/lifeskills/index_7260.html
  5. UNESDOC, FRESH: a comprehensive school health approach to achieve EFA: https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000125537
  6. 国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 持続可能な開発目標:https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals/