スリランカ西部州学校保健プロジェクト訪問

国立国際医療研究センター 黒谷 佳代

日 時:2010年7月30日(土)~8月4日(木)
同行者:小林博(財団法人札幌がんセミナー)溝上哲也(国立国際医療研究センター)
訪問地:スリランカ西部州ホマガマ

私自身にとっては、初めてのスリランカ訪問であった。出発前に抱いていたスリランカの印象は、少し前まで内戦をしていたカレーと紅茶と宝石の国という何とも雑多なイメージで、個人的にも国に馴染めるかどうか不安であった。しかし、成田からコロンボへ向かう機内にて偶然席が近くて話をしたスリランカ人は何とも愉快で親しみやすい人柄であり、さらに到着したコロンボ空港では笑みを浮かべたブッダ像が迎えてくれた。ふいに、今回の訪問でスリランカにはまってしまいそうな予感がした。

2011年8月2日(火)

午前8時、学校保健プロジェクトの実務を担っている健康増進財団(FHP)のアミラさんがワゴン車でホテルまで迎えに来てくれ、小林博先生とご家族と共にホマガマの小学校へ向かう。朝の通勤ラッシュに巻き込まれ、大渋滞である。なかなか進まない道をアミラさんの素晴しい運転テクニックですり抜けていく。実に見事である。それにしても、スリランカの車、スリーウィーラー、バスの運転手は皆クラクションを鳴らすのが好きなようで、四六時中鳴り響いていた印象だ。ホテルから、約3時間後ようやく目的地である1校目の対象校に到着した。サマラシンゲ教授とFHPのスザンタさんが既に到着し待ってくれていた。

学校1:

到着した我々を待っていたのは、歓迎の花を両手で大事そうに握り、白い衣装に身を包んだ、まだ幼い小学生であった。一人一人ハニカミながら、我々に花を渡してくれた後は、伝統的な楽器のリズムに合わせて校庭へと案内してくれる。

そこには、木の家があり、なんと「いらっしゃいませ」と日本語でウェルカムボードを書いてくれているではないか。心遣いに嬉しさがこみあげてくる。木陰にはたくさんの年少の生徒が集まってくれ、歓迎のセレモニーを行ってくれた。

校庭の緑の屋根の木陰で、母親と我々一行との座談会が始まった。この学校では既に1年間介入を行っており、初めは皆顔を見合わせ黙っていたが一人の母親が話し始めた。

それをキッカケに皆口々に自分自身の変化を語り始めた。ある人は「ここ1年間で体重が10キロ落ちた」という。どのようにして痩せたのかと、溝上が尋ねると「今までは歩かなかったが、毎日買い物に1キロ歩いて行くようになった」と答える。ところで、こちらの料理を数日間食べてみて思ったが、どれも油が多く使われており、スリランカの食事へのアプローチのポイントの一つは「油」のように思える。さぞかし、油を減らすのは難しいのだろうと感じていたが、ある母親は「油を1カ月に6缶使っていたが、それが4本に減らすことができた。そのうちの2本は燃料に使っている」と話し、不要な油を減らすことができたようだ。(個人的には、油を減らすことができたことよりも、燃料に使う油を食べていることに驚いた。)また、「レシピを教えてくれたら、油の少ない料理もできる」という意見もあがった。母親たちの話で最も印象的だったのは「痩せたことで、夫も子供も喜んでいる。」そして「油の量を減らしたり、TVの時間を減らすことで、痩せることができ、節約にもなる。」という意見だ。ちなみに、母親同士の繋がりも強く、皆で集まって情報交換などもしているようなので、「学校から地域へ」繋がっていっている実感を持った。

母親との座談会後、先生やお母さんたちが軽食を準備してくれていた。先ほどまで校庭の日差しで火照った体に、地元のフルーツやお菓子が心地良く浸み込んでいく気がした。やはり、美味しい。有難く頂いた。

学校の先生方と今後の話などし、学校を後にした。

去り際、子どもたちだけでなく、お母さんや先生たちが「また絶対来てね!待ってるわ。」と言ってくれたことが嬉しかった。また、必ず行きたいと思う。

学校2:

 しばらく車で走ると田園があり、それを抜けた先に対象校はあった。到着したのは既に午後1時過ぎだったため、ほとんどの生徒は帰宅していたが、中心となり活動している生徒たちが手作りのメッセージ入りの花で我々を迎えてくれた。

1校目よりも年長の生徒たちで、何だか凛々しく見える。各グループ5人くらいに分かれて、「BMI」「運動」「タバコ」などのトピックに関して問題点を見つけ、それに対するアプローチ案を発表してくれた。 たとえば、「地域で運動を推進しよう」という場合、単に「運動しましょう」というよりもみんなで楽しんで運動するほうが良いと生徒たちは考え「地域ごとにクリケットチームを作り、トーナメント方式で戦う」という方法を提案していた。

生徒たちの発表は、言語がわからず理解できない部分が実は多かったが、自分たちで考え問題点にアプローチしていく姿はこちらにもよく伝わり、彼らには色々なものを変えていける力も閃きも無限大にあると感じ、頼もしく思えた。

その後、校長室でフルーツの綺麗な盛り合わせを提供してくれた。こちらも美しく飾ってある上に、とても美味しい。暑さに疲れた中でのフルーツに身も心も潤った。

やはり、御もてなしの心や細やかな気遣いなど、スリランカ人と日本人は通じるところがあるように感じる。彼らに親近感と、そしてこれからも共に歩んでいきたい気持ちが大きくなった。

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